KNOT

Concept
鎌倉・七里ガ浜の閑静な住宅地に計画された本邸宅は、オーストラリア在住の施主にとっての帰国時の拠点として位置づけられるセカンドハウスである。
敷地は南側に公園、東側に高低差のある道路を抱え、周囲は住宅に囲まれている。このような環境条件のなか、建物はL字型のコートハウスとし、中心に設けた中庭が住空間全体を緩やかに接続する構成とした。
1階には玄関、ベッドルーム、水回りを配し、すべての空間が中庭に対して開く。床と壁を同素材のタイルで仕上げ、天井にはチークのパネリングを施すことで、内外の連続性を強調。中庭に植えられた樹木と自然光が、季節や時間によって異なる陰影を室内に取り込む。
2階には、約43畳のLDKと書斎をまとめて配置。3.1mから3.7mにかけて上昇する勾配天井にチークを用い、南側のバルコニーと連続させることで、伸びやかで包まれ感のある空間を生み出している。開口部は公園側に大きく開き、東側はハイサイドライトによって通風と採光を確保しながら、外部の視線を遮っている。
外部仕上げや建具には、施主の意向によるアール・デコの要素やレトロシックなタイルを取り入れ、素材と意匠の調和を図った。プライバシーと開放性、そして日常と非日常の境界を丁寧に調整したこの住宅は、時間の蓄積を許容し、第二の暮らしの基盤として静かに存在している。
「KNOT」は“結び目”を意味する。
この住宅では、中庭を媒介にして、内部と外部、家族と風景、日常と非日常が穏やかに結び合う。建築が空間の交点となり、人の時間や感情をつなぎとめる存在であることを、この名に込めた。